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モノノベ第6
ニッポンの原点奈良・桜井 後編

次なる地は、三輪明神・大神神社だ。 大物主神(オオモノヌシノカミ)を祀っている日本最古の神社である。 本殿は設けず、拝殿の奥にある三ツ鳥居を通し、三輪山を拝する原初の神祀りの様を伝えている。 この三輪さんこそが、事ある度に訪れる、私の起点となる神社なのだ。

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第二の場所 大神神社

長谷寺を出て、駅へ向かう。 道中寄り道をしていたら電車を一本乗り過ごしてしまった。 ただ次の電車を待つだけでは面白くないので、もう一つ先の大和朝倉駅から歩いて行く事にした。 面白い出会いがあるかな〜と胸を膨らませる。 この道は一度歩いた事があるのだが、三輪山の麓を通るルートである。 田舎の田園風景を楽しめて、気分転換もできる心地の良い2キロ程のコースだ。 るんるんと歩いていると、ちょうど三輪山の頂上の周りだけ晴れていた。 雲は、龍の綿菓子のような形をしている。 道中可愛い生き物達とも出会い、私の幸せボルテージは上がっていくのだった。

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民家の道を越えていくと山が深まった。 ここからは神の世界という訳だ。 大物主神に会いに、今日は遥々桜井に来ている。 大物主神はこわい神様だ。 生半可な気持ちでは中に入れてくれない。 伊勢神宮に祀られている天照大神(アマテラスオオミカミ)を、伊勢に追いやったほどの神である。 一旦深呼吸をして、私は鳥居を潜った。

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今日も凛とした佇まいである大神神社。 まずは拝殿にて、二礼二拍手一礼。 「いつもありがとうございます。」と心の中でお礼を唱えた。 狭井神社に移動。 こちらは三輪の神様の荒魂(あらみたま)を祀っている。 病気平癒の神様として信仰が篤い。 裏にある井戸の水を有難く頂戴した。 狭井神社の側から、三輪さんの御神体に登拝する事ができる。 頂上まで片道1時間ほどであるが、その道中飲み食いトイレは厳禁である。 2年前に一度登拝した事があるが、そこでの体験は今までの人生で唯一無二の経験であった。 体いっぱいに三輪の神様のエネルギーを感じる事ができる。 今はコロナの影響で登る事は出来なかったが、再開したらまた登拝したいものだ。 いつもであれば、そのまま降りて家路に就くのだが、今日はもう一つ寄りたい所がある。 なんとなく行かなければならない気がするのだ。 そこは、久延彦神社。

第三の場所 久延彦神社

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ここには、久延彦神(クエビコノカミ)が祀られており、知恵・知識の神として知られている。 この神様は面白く、久延彦神とは『カカシ』の事である。 古事記によると、少彦名神(スクナヒコナノカミ)が初めて出現した時、誰も知らなかった少彦名神の名を知っていた神が、久延彦神である。 知恵の神様がカカシだとは、日本の神話は頓知が利いていて面白い。 またこの神社には展望台があり、三輪の大鳥居や大和三山(香具山、畝傍山、耳成山)などが見渡せる。 晴れていれば、二上山や葛城山も見る事ができる。 今日はなぜかこの場所、この景色を見たかったのかもしれない。。 参拝を済ませた後、展望台の方へと向かった。 空には雲が覆っているので、遠いところまでの景色は見えない。 ただ、ぼーっと大鳥居の先を見つめていた。 急に私のいる所だけ、雲に切れ間が出来た! ぽこっと穴が空いたような。 すると、北側からアマテラス(太陽)が姿を現そうとしている。 出るか?!出ないか?!とアマテラスの登場を待ち望む。 完全に姿を現しはしなかったが、そのおかげで辺りが明るく照らされた。 霞んでいた二上山や葛城山も見えてきている。 この時間、この場所に居た者達だけに与えられた天(大物主神)からのギフトだ。

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この土地に来るまで悩んでいた事、やろうとしている事を後押ししてくれているのではないか。 そのように私は受け取った。 神社に行き、人それぞれ受け取り方は様々だと思うが、私の中ではパワーをもらっているような感覚なのである。 どのような人生を生き、どのような選択をしても、それは個人の自由である。 電車を一本逃したからこそ、この景色を見る事が出来た。 色んな出来事のタイミングが重なり合って起こるものである。 『失敗した』『間違っていた』 と思うのは、その先にある新たな展開を考える事から、逃げているだけに過ぎないのかもしれない。 だから私は、今日桜井に来たかった。 負のエネルギーに巻き込まれないように。 自分の道を正しく生きる為に。 大物主神に呼ばれた理由だと感じている。 明日からの人生も、自分の信じる道を生きていこう。

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文章:ボタ餅 写真:ボタ餅・てんぐ

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