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モノノベ第10
東京二〇二一 明治神宮〜皇居〜豊洲編

強く眩しい陽射しで目を覚ます。寝過ごしてしまったかと思い、時計を見るとa.m.6:00。 カーテンを開けたまま寝ていたようだ。早起きは旅をするには好都合である。 さて今日はどこを歩こう。 大まかな行き先だけを決めてルートはその時の気分で進むのがモノノベ流。 そうだ。ここから一番近い明治神宮に行ってみよう。 私を魅了してくれた渋谷の街を離れ、新たな発見を求めて歩き出した。

明治神宮

大正9年(1920年)11月1日に創建され、明治天皇と昭憲皇太后を祀っている神社である。 渋谷区代々木に鎮座し、その広さは東京ドーム15個分に相当する。 都会の中心に突如現れる御姿は赫々たるものだ。 JR原宿駅のすぐ傍の入り口は、まるで異世界への扉のよう。 では早速入ってみよう。 8月という事もあり、真上からジリジリとした暑さが私の頭を一生懸命に熱し続けている。一歩中に入ればその雑音は消え去った。 樹齢100年ほどの大きな椎・樫・楠などの照葉樹によって守られていたのだ。実際に昭和20年4月の空襲により明治神宮の社殿の多くは焼失したが、燃えやすい針葉樹ではなく照葉樹を植えていた為、延焼を免れ大きな被害は出なかったと記されている。 隣町まであるだろう距離の参道を進む途中森の中でキツツキが木をこつく音が聴こえてきた。「コツコツコツコツコツ…」とても素早いビートを刻んでいた。 さて、ここにきてやっと電車に乗る。 東京メトロ千代田線に乗り、目指すは国会議事堂だ。 ここで東京マメ知識をひとつ。 『東京の地下鉄は車両が長い。』

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国会議事堂・皇居

日本人として一度は行っておきたい、見ておきたい場所。 それは国の中枢期間が集まる永田町や皇居であろう。 地下鉄を降りて地上へ登ると、今まで見てきた東京の景色とは違う光景が広がっていた。 日曜日だった事もあるが、目の前には広大な敷地と立派な建造物、そして凛とした静寂が辺りを包み込んでいる。 一歩一歩、脳裏に焼き付けながら歩き続ける。 この辺りを通行している人は私と右翼の人だけ。そこら中で警備している警察官にタイホされないか心配だ。 ミンミンゼミの盛大な鳴き声がする道の中をゆっくり歩き続けると、これまた広大な森が見えてきた。 手前には川が流れ、城を守る堀の役目をしている。 なんて大きくて立派で厳かなんだろう。一目で皇居であると分かった。 桜田門から中に入り、外苑のところまで出ると数百本はあろう松が綺麗に等間隔に植えられていた。 松の木の先には巨大な丸の内ビルディングが何棟も建っている。おもちゃ箱の中にいるような感覚がする。 整えられた自然と造られた巨大ビル街。この景色は東京のこの地域でしか見れない光景だろう。 その時私は気付いてしまった。 東京はもはや日本の中の一つの都市ではなく、『東京』という一つの国であるという事に。

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豊洲

ひと時世の中をざわつかせた場所と言えば、豊洲市場だろう。 景色を見渡すと大きなタワーマンションにそれに負けんばかりの高さのあるビル、そして目の前には大きな橋が架かっている。 この辺りは埋立地だから本当に一から人間によって創られた街なのである。 これがネオ東京かと思わされた。 よく目を凝らすと様々な国旗が掛けられているマンションを発見。 Googleマップを開き現在の位置情報をチェック。 『TOKYO2020選手村』と示されている。 一眼レフの望遠レンズを巧みに使い、どこの国の国旗だろうと観察していた。 自己主張激しめのTEAM CHINAやギリシャ、イラン、インドネシアなどが見える。 実際に各国から選手たちが来ているのだと実感できる。 太陽の向きが変わってパラソルの中に陽射しが入り込んできたので、向こう岸に渡ってみようと思う。

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晴海大橋・選手村

人気のランニングスポットなのか、ウェア姿の人が多い。 高層マンションや商業施設と適度な緑が融合し、短距離走専用コートにスケボーパークが見える。外国?と思わせられる都会っぷり。 多種多様性を意識し、完全に創られた街だ。まさしく『ダイバーシティ東京』であろう。 スカイツリーがビルとビルの間からちょこんと顔を出している。 晴海大橋を渡りきったところに選手村の入り口があった。 年季の入っている工場跡地のような所をゲート代わりにしており、そこでIDチェックなどをして入っていく選手たちがなんだかシュールだ。 私はまたもや一眼レフの望遠レンズを巧みに使い、双眼鏡代わりにして観察した。 「有名選手はいないか?」とミーハー気質を発揮。望遠レンズで覗いた先には、バレーボール選手であろう長身の金髪美女たちが、セルフィーをして楽しんでいた。 このような隔離された場所でも、案外楽しく過ごしてくれているようでホッとした。 この2日間東京の色んな場所を見てまわったが、この橋の上から見渡す景色が一番印象に残っている。 必死に東京という街が守ろうとしているものは、そこに住む人々のステータスなのだと感じた。 だから何があっても動きを止めることは出来ないのだろうと。 『東京とその他』 差がここまでついてしまっている事はどうしようも出来ないが、地方は地方で東京にないモノをやって行こう。 脳にいっぱいの情報と光景を保存して、帰宅の途につく。 神戸空港に着いた時には、過去にタイムスリップしたのかと思ってしまった。 東京で見て、感じた5万歩分のメモリをアップロードして、今日からまた日々の生活に戻る。 さぁ、次はどこを旅しよう。

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文章・写真:ボタ餅

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